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母を乗せていく、親戚の家までの往復120kmのドライブだった。
先方の迷惑にならないように昼飯時を避けたスケジュールにするのが母らしい。自分たちが食事するファミレスは帰路に設定した。
しかし、いざ出発となったとき、母はパンを持って行きたいと言った。
やはり手元に何か食べ物があったほうが落ち着くらしい。
黒コッベという大きな菓子パンがたまたま家にあり、それを荷物に加えた。
そして、そのお出かけは平穏無事そのものとなった。
──ただそれだけの話。
御守りのような菓子パン。
そして、その一個で得られた安心とかいう貴重なものの思い出。
今日も母の位牌の前に菓子パンを供えた。
★★★★★★
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